第二阿房列車 (福武文庫)

第二阿房列車 (福武文庫)の詳細

本当に美味しいものを食べた時や絶景に遭遇した時、人は「コトバ」を失う。その種の感動は「どこがどのように素晴らしい」などと「コトバで解説」する事が空しくなる程の深さだからだろう。この名作に関して私が「ここが好きだ」と指摘出来る箇所は山ほどある。全編に横溢する百けん先生の「凛」とした「旅の哲学」。決してひけらかす事が無いのにジワジワと表面に染み出る教養の深さ。飄々として軽妙でありながら、キリリと引き締まった文体と構成。同行のヒマラヤ山系氏との漫才のような絶妙のやり取りと、あたかもそれが読者の眼前で繰り広げられているかの如き活き活きとした描写ぶり。しかし、その種の感想をいくら美辞麗句を駆使して並べたところで、この本の素晴らしさを伝える事には丸で役立たないのがもどかしい思いだ。この本の「レビュー困難」な素晴らしさを味わうには、実際にお読み頂く他は無い。推敲の痕跡すら見られない、ダラダラ冗長な凡書の溢れる今の出版界を百けん先生に一喝して頂きたい！